乳液編 (2009.08.15)

私が幼い頃、母の鏡台には化粧水と必ずセットで置いてあった「乳液」。最近では美容液に押されぎみで目立たない存在になりつつある。 第三回目の今回は、「乳液」について考えていきたい。
まずは、「乳液」の基本的な肌への効果について押さえておこう。


乳液とは?
クリームと比べて、油分が少なく水分が多いのが特徴。流動性があり、クリームと化粧水の中間的な性質をもっている。皮膚に薄く良く伸びて、サラッとなじみやすい使用感になっている。
乳液にはクリームと同じように水の中に油が微細に分散している水中油型(O/W型)、油の中に水が微細に分散している油中水型(W/O型)のエマルション(乳濁液)がある。
大部分の乳液は水中油型で、油分の多い油中水型は主にクレンジングやマッサージに使われる。

主な乳液の種類

・エモリエントミルク
モイスチャーミルクや保湿・柔軟乳液などといわれる。季節の変化や年齢などにより乱れた皮脂のモイスチャーバランスを保湿成分や油分・水分の補給により 正常に整える。
エモリエントの成分は、皮脂膜に似せてつくられ、皮脂にみられる中性脂肪としてオリーブ油やつばき油などの植物油、コレステロールやそのエ ステルとしてラノリン、炭化水素にはスクワラン、高級脂肪酸にはイソステアリン酸などの油分が配合される。
乳液の硬さや感触を変えたり、安定化するために 半固体のラノリンやワセリン、固体ではステアリン酸などの高級脂肪酸、セタノールなどの高級アルコールや蜜ロウなどのロウ類も配合される。保湿成分として はグリセリンやアミノ酸、コラーゲンなどが配合される。

・モイスチャーミルキーローション
マイクロエマルション(粒子径を細かく乳化する方式)を用いた保湿乳液で、化粧水と同じように粘土がなく少し青白く半透明でサラッとしたテクスチャー。
若い皮膚や夏用、敏感肌用などは油分を少なくし、グリセリンやソルビトール、アミノ酸やヒアルロン酸などの保湿成分を配合した美容液のような機能になっている。
油分はスクワランやホホバ油、鎖状や環状シリコーンなどを水添、硬化ヒマシ油系非イオン活性剤などで可溶化系としたもの。粒子の大きさが 0.0001ミリくらいと超微細なので分離することなく安定している。
最近では、レシチンやスフィンゴミエリンなどを用いて超音波法によるリポソームタイ プのローションがつくられ、皮膚からの水分蒸散抑制に効果の高い肌荒れ防止製品が発売になっている。

・紫外線防止用乳液
乳液は皮膚によくのびて、さっぱりとした水中油型が多いので紫外線防止化粧品として適している。防止効果の高い製品には紫外線吸収剤が10%以上も配合 され、さらに紫外線散乱剤の微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛なども含まれる。
日に当たると発汗が促進されるため、汗により浮き上がらないように乳化剤を かなり親油性にしている。また、落ちにくいように炭化水素系のパラフィンやワセリン、シリコーン油、シリコーン樹脂などが使われている。

・クレンジングミルク
親水性(O/W)乳化タイプで、クリームタイプのクレンジング剤よりも使用後の感触がさっぱりしている。乳液状なので使い易いのが特徴。
乾燥肌の人にはしっとりする洗い心地から、人気が高い。

・ボディ用乳液
季節の変化や加齢にともなう皮膚の乾燥やつっぱりを速やかに回復させる保湿成分や皮脂成分を配合したもの。皮脂の分泌が少ない身体の側面や腰、手足を 中心とした乾燥しがちな肌に皮脂を補うための乳液。皮脂類似成分としてオリーブオイルやステアリン酸、スクワラン、コレステロール成分を含んだラノリン、 プロピレングリコール、コラーゲン、ヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿剤を配合して乳化したもの。


乳化剤について
乳液はクリームと同じように乳化(水と油を混ぜる方式)してつくられている。
肌への使用感や有効性を高めるために、乳化という製造技術は非常に大切である。 できるだけ肌への負担を減らし、有効成分の皮膚への浸透や使用感を高めることが乳化法にもとめられる。そのため、最小限の界面活性剤の量で最大限微細な乳 化物をつくるための努力が払われている。

主な乳化の技術

・非水乳化技術
今までの乳化方法では乳化力の弱かった界面活性剤の乳化力を高めたり、乳化が困難だったシリコーンを微細粒子に乳化する為に応用される。

・液晶乳化技術
水にも油にもなじみ、しかも両者を同時に保持できる乳化ができる。水分も油分も十分に必要とする乾燥肌や荒れ肌などの乳液などに応用される。

・アミノ酸ゲル乳化剤
安定性に優れしかもさっぱり感のあるW/O型乳化をつくるために応用。

・高圧乳化技術
高圧ホモナイザーという機械を用いる。ごく少量の界面活性剤の使用で微細で均一な粒子のエマルションをつくることができる。

・D乳化技術
界面活性剤の相を上手に利用した乳化法。界面活性剤の調整をあまり必要としないで少量の界面活性剤の使用で微細粒子のエマルションをつくることができる。

・粘土鉱物を用いた乳化技術
高濃度のグリセリンなどの多価アルコールや油分などを安定に配合したW/O型エマルションに応用される。「B&Sゲル乳化法」ともいわれる。

・多相エマルション技術
W/O型エマルションをさらに水相に分散させた、W/O/W型乳化。使用感や機能性の向上を目的とする化粧品に応用される。


乳液市場の動向は?

ここ数年は高機能美容液が注目され、また効能的にも保湿を兼ねたものが多いことから化粧水の後に美容液、クリームという使い方をする消費者が非常に多くなってきている。
美容液か乳液のどちらかを購入する場合は、消費者にとってエイジング、美白など目的がはっきりしている美容液を自分の悩みに合わせて選ぶことが多くなっていることが主な要因だ。

しかし、独自の美容理論を展開し、乳液をスキンケアラインの要として位置づけ、着実にファンを増やしている大手化粧品メーカーもある。 そのメーカーの最大の特徴は、乳液に「膜を作る」のではなく、「潤し、柔らかくすること」という目的を持たせていることだ。洗顔後すぐに乳液をつかうことで、肌の水分・油分・保湿成分を整え、さらに後に使う化粧水や美容液の効果を高めるという理論を打ち出している。

まず先に、洗顔後の肌状態を乳液で整えてからその後のスキンケアを行うことで「見た目もふっくらなめらか肌に」「乾燥や紫外線などの外的環境に影響されにくい肌に」「やわらかくモチモチの肌に」なるとしている。
洗顔の後に化粧水を使う、という一般的に慣れ親しんだ使用ステップを根底から覆す、洗顔の後にすぐに乳液を使うという使い方の提案は、斬新でありながら一度その使い方を知ってしまうとやめられない定着感をもっている。
美容液に比べ、効果・効能を打ち出しにくい「乳液」というアイテム自体を、美容理論や使用ステップから独自の提案をすることにより、他社にない美肌作りを確立したという点においては、「乳液」の良さを最大限に活かした戦略として非常に参考になる例である。


乳液開発のポイント

乳液は、成分的な特徴で打ち出していくというよりも、テクスチャーで広くアピールできるアイテムである。 全体的な商品ラインナップの中では地味なポジションではあるが、「肌へのいたわり感」や「ブランドの優しさ」というイメージを訴求するにはとても重要なアイテムである。 そのため、企画したい商品やブランドの特性をしっかりと考えた上で「整肌」という位置づけから一歩前に進んだ商品を開発することで「乳液」というアイテムがいかされてくる。 昨今、しっかりとしたコンセプトをもった「乳液」を発売するのはねらい目かもしれない。

虎の巻格言:「乳液は名傍役。演じ方次第で光り輝く」


参考図書:コスメチックQ&A 日本化粧品工業連合会編
美容最前線 ビューティトレンド 霜川忠正著