イマドキ、ネイル事情 (2009.08.13)

なに気なく電車のつり革に目を遣ると、近頃は探さなくても美しくケアされた指先が視界に入って来ます。
そう。今やネイルは当たり前の時代。

百貨店における化粧品の売り上げが横バイな中、美容業界で好調なのはサロンビジネス。
中でもとりわけ業績を伸ばしているのがネイル市場です。

欧米から入って来た当初は、爪の弱い白色人種と違い、特に特別なケアが無くても困らない日本人には、一部の富裕層が行う特別なものでしかありませんでしたが、1995年『シャネル』のネイルカラー『ルージュ ヌワール』の誕生で、女性の『実際に試してみたい』という衝動が高まったのが 今の日本のネイル文化の始まりです。

ワールドコレクションのシーンでも メイク同様に注目されているネイルアートですが、ヘアケア製品やメイク以上に、ファッショントレンドとのリンクが打ち出し易く、またコーディネイト力も多岐に渡ることも手伝って、目の肥えた日本の消費者の心を惹き付けているようです。

10代の若い一般の女の子たちから20代30代のOLを中心に幅広く浸透し、近頃では男性客を受け入れるまでに急成長を遂げた陰で、市場を牽引してきたのがネイリスト達。
今回はネイリストの視点から、イマドキのネイル事情を分析してみたいと思います。


まず、これほど伸びている一番の理由は何でしょうか?

ネイルビジネスの利点はスペースを取らず、異業種とコラボレートしやすいことです。
ヘアーサロンやエステサロンの一角、洋服やアクセサリー売り場の一角、人がオシャレを楽しもうと出かける場所には、どこへでも違和感無くすんなり入り込む事ができ、「何かのついでにネイルでも…」と気軽に人が集まります。
ネイルの性質上、比較的短いサイクルでお客様が来店されるので、コラボの相手もにっこり。
アメリカでも一カ所で複数のサービスを受けられるトータルビューティをテーマとしたデイスパが流行っています。
みんなが嬉しいのがビジネス基本だから、伸びているのは自然な形なのかもしれません。

こうして需要と共に急増し、競争も激化して来たネイルサロンですが、お客様のハートを掴む、勝ち組ネイルサロンとそうでないサロンを二分するものは何でしょう?

フリーペーパーを見てみても、紙面を埋め尽くすサロンの多さには驚きます。
余ある情報の中から選ばれて勝ち残る為には、他店には無い魅力で何気なく訪れた新規のお客様をファンに変える必要があります。

基本は確かな技術が提供される事。
同じメニューをオーダーしてもサロンによって、サービスや仕上がりに大きな差が出てしまっているのが現状です。
勝ち組サロンとしてサロン名をブランド化してゆく過程には、確かな技術を持ったネイルアーティストが接客する事が絶対条件です。
その上でアーティストとしての発想を生かしつつも、ファッションも含めたトータルなバランスを考慮できる、いわゆるセンスの良いネイルアーティストがいれば、お店の予約は途切れる事がありません。

その点から見ると、サロン同様乱立しているネイルスクールですが、実際に、カリキュラムをこなしただけで卒業できて、すぐにプロが名乗れるのは如何なものかとも思います。
今後、確かな技術と知識のあるネイリストをきちんと育てるという部分にもビジネスの鍵は潜んでいるのでは??

さて、プロとしてお仕事する以上、確かな技術の提供は当然の事ですが、競争の激化している今、ただメニューをこなしているだけではお客様をファンに変えることはできません。
お客様はただ爪を綺麗にしたいから通うのでは無く、リラックスしたかったり、気分転換も求めているという点を忘れるべからず。

言ってしまえば自転車売り場の一角でもサロンは開けます。
サロンのコストダウンが進む中ではマイノリティかもしれませんが、逆に非日常なラグジュアリーな空間を演出するのも一つのアイデア。
お金をかければ良いと言う訳ではありませんが、お客様が「今日は自分にご褒美」と言って選ぶようなサロン、音、空間、温度、香、様々な点から「もてなし」の気持ちが伝わるお店作りはお客様のハートに残るもの…女性は目に見えない物にお金を払う生き物なのです。

話は変わり、今年4月に日本初のメンズ専用のネイルサロンが登場しましたが、メンズ市場の需要はどうでしょうか?

数年前からコスメ、エステ業界でも注目を浴びて来たニューマーケットですが、ネイルの世界でも 確実に需要は伸びて来ているように感じます。


手先はその人のライフスタイル含めたパーソナリティが問われるパーツです。
性別を問わず、ファッションやヘアスタイルを整え、ある程度、生活も潤っている人が指先まできちんとしていたらパーフェクト、という感覚なのかもしれません。

そのような視点からでしょうか、特に握手をする機会の多いホテルマンや商社マン、外資系企業に勤める方など、手元を気にする男性からの反響が大きく、リピート客も増えつつあるように思います。
もちろん女性のようにアートやストーンを楽しむと言うよりは、身だしなみの一環という事が大前提なので、基本のケアにシンプルなカラーを選ぶ等、人に不快感を与えない程度の控えめなものがほとんどで、当面はシンプルなケア関連の需要が伸びてゆくと思いますが、サロン通いに慣れて来た方の中には、ワンポイントでお茶目なデザインを楽しまれる方も出て来ているので、今後どのように成長してゆくか楽しみな市場ですね。

最後に、コレクションのシーンから見た来年の春夏のネイルのトレンドはどうなるのでしょうか?

リラックス感や、質感がキーワードとなった2008年春夏コレクション。
ネイルに求められたのは「意外性」でした。
ネイルに意外性を持たせることにより、ウエアの持つエレガントさをより強調させたり、カジュアルなテイストを、ラグジュアリーに格上げさせたりするブランドが目立ちました。

新たなフォルムを提案し、トレンドを作ったのが『イヴサンローラン』です。
ネイルのフォルムはスクエア型が減りラウンド型主流の中、長く尖った爪は一見すると毒っ気がありますが、神秘的とも言える高貴さも放っています。

その他にも、様々なトレンドが登場しました。

切り揃えられた爪にポップなカラーを合わせ、カラーをジュエリー代わりにするもの。
黒、または白一色で仕上げ、ウエアをモダンかつクールに昇華させるもの。

生まれ持った爪の形をデフォルメしたかのようなユニークさがありながら、エレガントさも兼ね備えたダブルフレンチネイル。

手そのものの美しさを引き出し、ウエアの上質感をより格上げするナチュラルカラーネイル。

62ブランドものコレクションのネイルを手がけたロクサーヌ・ヴァリノッティ氏は、
「2007年同様、2008年春夏もネイルはシアー感がキーワード。しかし同時にカラフルなコレクションも増えたように思います。また、ここ数年ではメイクがナチュラルな方向に進むのに比例するかのように、デザイナーのネイルに対するこだわりが強まってきている」
とコメントしています。

美容業界においてネイルサロンに牽引されるネイルビジネスのこの2、3年の成長は著しいものの、まだ決して飽和状態ではなく、暫く成長の勢いは止まらなそうです。

美容業界の更なる発展のためにも、まだ可能性の伸びシロがあるネイル業界の活性化に期待したいですね。